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ファミコンを“楽器”にして名曲を再現 制約あるからこそ分かる強固なメロディ

ファミコンなどの実機を用いてバンド演奏。セッティングの様子 写真提供:マツケんさんの画像

ファミコンなどの実機を用いてバンド演奏。セッティングの様子 写真提供:マツケんさん

 今でこそ当たり前となったYou Tubeやニコニコ動画などの“演奏してみた”系の動画。そんななか、とくに異彩を放っているのがゲーム音楽を演奏するNES BANDだ。最大の特徴は“ファミコン本体”を楽器として使用しているところ。キーボードをケーブルでファミコンにつなぎ、ファミコンに内蔵されている“音色そのもの”を使って演奏されており、同手法で演奏しアップされた動画「ファミコン実機演奏 ドラクエ3」は122万再生(2019年8月現在)の大ヒットとなっている。なぜ彼らはこんな特殊な演奏を始めたのか。NES BANDのリーダーであるマツケんさんに直撃し、バンドコンセプトからレトロゲーム音楽の魅力までを聞いた。

【動画】122万再生を記録 『ドラクエ3』を“ファミコン音源”で全クリ再現

■4チャンネルで音楽を成り立たせるには“メロディの強さ”が必要

 マツケんさんはYouTubeが黎明期である2007年に「JR東日本 駅発車メロディピアノメドレー」をYouTube上にアップ。言葉通り、ピアノでJR東日本のさまざまな駅の発車メロディをメドレーで演奏したもので、ニコニコ動画で、当時では最大クラスとなる1週間で10万再生を記録した。翌年にはその楽譜集『鉄のバイエル』(ダイヤモンド社)を出版。人気ゲームソフト『ドラゴンクエスト』シリーズのピアノ演奏動画もアップし、ニコ動ランキングのデイリーでトップ5に入るなどの活躍を見せていた。

「そんな活動を続けていたある日、海外の個人が作ったキーボードとファミコンを結ぶカートリッジを発見。ファミコンの音楽には、その構成を簡単にパートで表現するとソプラノ、アルト、ベース、パーカッションの4ch(チャンネル)あるのですが、このカートリッジは、そのなかの単音だけ演奏できるもの。とあるライブで、ベース音を抜いたファミコンゲームの音楽をバックで鳴らし、それに合わせて私がこのカートリッジを用いて、ベース音をキーボードで演奏するパフォーマンスを行いました。そうしたところ、その動画がネット記事に取り上げられ、ニコ動の“演奏してみた”カテゴリーでデイリー1位に。そこで私は“4人いればフル演奏できるのでは?“と思い、メンバーを募集、2011年にNES BANDが誕生しました」(マツケんさん/以下同)

 NES BANDのコンセプトは「ファミコン音楽の原曲の良さと、ファミコン本体からしか出せない音色の良さ」の2点を伝えることだという。

「ファミコン音楽の良さは3音+1ノイズという4 chしか使用できない“制約”のなかにあると思います。ソプラノ(1ch)、ベース(3ch)、パーカッション(4ch)だけでも音楽は成立するのですが、そこにアルト(2ch)が存在。この2chを“力技”でどう工夫するかがファミコン音楽の真髄だと思っています。『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』などの楽曲がまさにそうなのですが、2chパートはオーケストラ版などの他のバージョンにはないアレンジがなされている場合が多く、各ゲーム音楽の作家それぞれの工夫がなされていることが多いのです」

 さらにいえば、制約されているがゆえに、一つひとつのメロディがハッキリ作られていることも魅力の一つ。「今のゲームハード機は、音楽面ではほぼ何でも出来るので、言葉通りにBGM化してしまっている面はあるかと思います。一方でファミコン音楽は4chしかない。それで音楽を成り立たせられるのは、まさに“メロディの強さ”であるわけです。それが、今のゲーム音楽に比べて記憶に残りやすい要因の一つではあると思います。もちろん、今のゲーム音楽も素晴らしいものではありますが」

 “ファミコン本体の音色”の良さに関しては、当時の技術が発展途上だったゆえの良い意味での“チープさ”に秘密がある。「1ch、2chはパルス波と呼ばれる音であるのに対し、ベースの3chは三角波。ですがこれは当時の技術の関係で完全な三角波とはなっておらず、“疑似三角波”という特殊な音になっています。その音一つとっても、“ファミコン以外ではどこにもない”貴重な音となっており、それゆえファミコンは楽器としても魅力があるのです」

■ファミコン音楽をライブ会場の音響で “懐かしさ”を共有する“体感型”ライブ

 マツケんさんはスーパーファミコンの実機を楽器として使用する「SUPER NES BAND」、PCエンジンを使用した「PCE BAND」なども主宰するが、「ゲームの“音色”として特に面白いのはスーパーファミコンぐらいまででしょうか」と解説。「例えば、スーパーファミコンは技術の発達により、声やトランペットなど録音した音をそのままドレミの音階でメロディにすることが可能になりましたが、完全に“その音”にすることは当時の技術や容量では限界があった。ですから、例えば『ドラゴンクエスト』のフルートにしても、『ファイナルファンタジー』のトランペットにしても独特で、“スーパーファミコンでしか聞けない貴重な音”が誕生した。その音が面白く特徴的ゆえ、音楽のなかで使用すると、不思議なひっかかりを残すのです」

 マツケんさんが注目するゲーム音楽の作曲家を聞くと、人気ゲーム『MOTHER』『バルーンファイト』『レッキングクルー』『メトロイド』などの田中宏和氏。『チャレンジャー』『忍者ハットリくん』『スターソルジャー』『ヘクター’87』などの国本剛章氏。そして『ドラゴンクエスト』シリーズのなどすぎやまこういち氏はとくに敬愛していると話す。

「私が語ることなどおこがましいのですが、すぎやまこういちさんは、聞いただけで“すぎやまこういちさんの曲だ”と分かるぐらいの個性をお持ちで、さらに音楽的教養が豊かであるため、音の快楽を知り尽くしているのでは、と思っています。ゲームの世界観と設定上の時代背景と合わせて、そこにマッチした作曲をされているのも素晴らしく思います」

 だが、それだけファミコン音楽が素晴らしく、音色がいいのであれば、ただゲーム音源を流していればいいのではないか。それを敢えてライブでやる意味はどこにあるのだろうか。

「一つはテレビのスピーカーでしか楽しんでなかったファミコン音楽をライブ会場の大音量で聴く貴重な体験。とくにファミコンの三角波とライブハウスのスピーカーの相性はなかなか良いものです。第2に、それぞれのパートの可視化。4人が1音ずつ担当して演奏するため、改めて4音のそれぞれの良さが目と耳で入ってくる。もう一つはライブ会場ならではの一体感。やはり感想も、子供の頃に遊んだファミコンゲームの思い出に浸る、“懐かしさ”にまつわる言葉が多い。“懐かしさ”を皆で一斉に感じる“体験型”のライブでもあります」

 そんなマツケんさんだが「実は僕自身は“懐かしさ”では活動していません(笑)」と語る。自身の体験や“懐かしさ”と切り離しても、惹かれてしまう音楽的な魅力がファミコン音楽にはあるという。

 「レトロゲーム音楽はとても面白い。これはもう“一つのジャンル”といってもよいかも知れません。その魅力を今後も世に継続して伝えていきたい」とマツケんさん。AIなど人間のやっていることを機械に取って代わられつつある現代、“機械がやることを人間がやる”という、世の進化の真逆を行くマツケんさんの今後の挑戦が楽しみだ。

(取材/文・衣輪晋一)

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